パリ音楽生活 |
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いきぬき |
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音楽情報 |
音と住まい
パリの音楽生活を楽しみたいとき、考慮したいのが「音」とご近所
留学でも、楽しみのための音楽生活でも、近所への音の配慮は欠かせません。
アパートばかりのパリでは、なおさらです。
心配の要らない理想例
・半地下式(ピアノ) ・庭に独立した建物 ・住居は日本式の一階で、音楽スタジオは地下
例外は、とても広く、壁の接したお隣のないアパート。音への苦情もないが、上の階からの音がかなり聞こえてきたので、お互い様、といったところでしょうか。
実際の苦情の例
建物は、中庭を囲んで四方にたっていて、階段は、それぞれの建物で別々。歌なら上の方なら迷惑をかけることもなかろうと思い4階に住んでいたと思うのですが、苦情は、同じ廊下からドアの出入りをする「隣近所」ではなく、思いもかけない向かいの建物、しかも下の方の住人から来ました。
現在、近所のアパートに声量のある歌手がいる模様です。つまり、同じような状況で音が聞こえてきます。それがどういうわけか、最近は、あまり聞こえなくなりました。窓を閉めるようになったようです。周りの人は普通の生活を送っているのですから、そういう常識は、もちあわせていたいものと心がけています。
我が家は、日本式の一階です。ラッキーなことに、苦情はありません。外からの音は聞こえるのですが、どういうわけか、音は外に漏れない、不可思議な窓です。でも、上記の歌手が窓を開けたまま歌っている場合は、こちらの窓を閉めていてもうるさいです。歌手の非常識は困ります。アマチュアであろうとプロであろうと、こういう非常識な人がいると、気を遣って音を出している人間が損をするような気がします。
どう気をつけるか
さて、音が多少聞こえたとしても、「近所には慣れていただく」という前提で、以下のことは守っています。
★ アパートの選び方を工夫する
最初からたとえば音楽学校で練習するつもりでいれば、アパート探しの条件は、一つ減り、選択肢が広がるともいえます。家賃の条件のため、パリに便のよい電車の通っているパリ郊外ということも考えられます。
にぎやかな地区を選ぶのもひとつ。ただし、中庭に一歩はいると案外静かで、迷惑をかけそうなところもありますので、その辺を見極めて。自分の音も丸聞こえになってかまわないのなら、通りに面したアパートも考えられますが、その場合も静かな住宅地より、大通りに面したところの方がいいかもしれません。向かいから苦情が来てもつまりませんし・・・
苦情は、たいてい一日中アパートに閉じこもって暮らしている人から来ますから、一人暮らしのお年寄りが少なさそうなアパートが理想的かもしれません。
★ 練習の時間帯をできるだけ一定にする
夜8時過ぎには音だししない。朝9時前にも音だししない。食事時も避ける・・・(?)
例外として、試験当日など「たまに」なら何とかなるとは思いますが。また、夏の明るい夜も、むやみに遅くならないのなら、練習もしたくなりますね。たまになら・・・
★窓はきちんと閉める
日本人の皆さんなら、上の歌手のような非常識なことはされないと思いますが・・・夏は汗だくで練習するわけです。
★ピアノのおき方
盲点です。アップライトなら、壁付けを避けます。楽器の裏側から音が出る仕組みなので、壁を伝わって、アパート全体に音が伝わる可能性があるのです。場所の都合で壁付けをしなくてはならないのなら、裏側に、音を吸い取るような、大きな布(布団とか?)をかけておくことをお勧めします。アップライトで苦情が出ても、グランドでは大丈夫、ということがあるのはそのせいです。グランドでも、できるだけ、日本式の一階をお勧めします。下へ音が伝わることが多いようです。グランドの下に布団を並べておく手もありかしら・・・?
なお、音の伝わり具合は、アパートによってなんともいえません。契約してしまう前にピアノを入れて試すわけにも行かないので、ピアノを入れ次第、どんな風に聞こえているのか、友人に聞いてもらうこともお勧めします。
★外で練習することも考える
せっかくアパートがあると思うと複雑な思いですが、万が一苦情がきているようなら、これもひとつの手。最初からそのつもりでいれば、アパート探しの条件は、一つ減り、選択肢が広がるともいえます。パリに便のよい電車の通っているパリ郊外ということも考えられます。
まず、通っている音楽学校に、あいた教室を使える時間帯がないか、調べましょう。(もちろん試験の時期には、競争が激しくなることを覚悟して。)エコールノルマルでは、ピアノもないような部屋が自由に使えた思い出がありますが、防音は整っておらず、隣の練習は筒抜け。
学校が遠いようなら、むしろ近所の練習スタジオを借りるのもひとつの方法。ふたつめの音楽学校に登録すれば、可能性も少し増えます。
★サイレント機能付楽器・電子ピアノ
番外編です。欠点もありますが、簡単な奥の手です。
★
サイレントが効かない歌について
歌のボリュームは、各自違います。外部に漏れる歌の音というのは、超音波の親戚みたいなもの。(?)高音がよく聞こえるのはそのため。それを磨くためにクラシックなどは練習しているので、サイレントをかけるつもりで練習していては意味がなく、のどに負担をかけることになります。小さい音を出すのは、大きい音を出すよりもコントロールを必要とします。逆に、テクニックが十分ではない場合、自分では大きな声を出しているつもりでも、大して遠くへ届かないこともあります。
「短時間に集中する」「練習時間をきちんと決める」「長く続けず休憩時間もとる」そして「やみくもに何度も繰り返して試さない」ことがひとつ。これだろうか、あの声だろうか、と、あれこれ“探して”いると、自分も疲れ、近所からも苦情が来やすい状況を招きます。そういった意味では、「こう歌いなさい」と、「見本を歌ってみせるだけの先生」の生徒さんは、「自分でどうやったらいいのか、具体的にわからない」ので、家でも繰り返して試すしか方法がありません。
あいさつ
日本なら「引越しそば」をもってあいさつ回りということがあります。私もしてみましたが、その挨拶先では、私の歌はちーとも聞こえておらず、迷惑はかけていなかった模様です。前述のように、見も知らぬ向かいの下の方からの苦情がきましたので、「音に関してごめんなさい」という挨拶は、意味がなかったようです。
アパートでよく顔を合わせる人には、見知らぬ人にもできるだけ挨拶しましょう。
すれ違ったり、エレベーターで一緒になったらBon jour(こんにちは)、エレベーターを降りるときには
Au revoir (さようなら)/ Bonnne journee、 夜なら、 bonne
soireeを。よそのアパートの友人宅へお邪魔するときも同様です。
慣れてくると、気分のいいものです。
ちなみに、フランスでは、「引越しの挨拶」の習慣はありません。でも、引越し直後でなくとも、壁を分かち合う隣人や、目と鼻の先のドアの中に住む人には、落ち着いたら「隣のものです、こんにちは」くらいは言ってみたいものです。無理にお茶にお招きする必要はありません。「隣に住んでます」だけでいいんです。かたことの立ち話でもいかが?
もしも苦情が来たのなら
外からの苦情は、自分自身の気分も害します。疲れます。上記の歌手のような人は苦情も平気かもしれませんが。
学生であったら、そのうち引越しするつもりになってもよいでしょう。しかし、あやまるだけでは疲れます。
「これは私の仕事なんです。」ときっぱり言ってしまってもいいかもしれません。
上記のような時間帯を守っているならば
「私はこのように気をつけて練習しています。」と、にこやかに主張できます。
「大家から許可を得ています」というのもひとつの手。
これは責任転嫁といいます。本当に相手が不満だったら、苦情は大家のところへいつか届くでしょう。
苦情が本当に来てしまったらショックかもしれませんが、でも、相手は、
「うるさいからそれをやめろ」といってるわけではないのです、たぶん。
どんなことをしているのか、知りたいだけなのかもしれない。どんな人間が音出ししているのかを、見たいだけなのかもしれない。
「知らない人がどこから音出ししている」のと
「知っている人が音を出している」のでは、ずいぶん違うもの。
と、逆の立場になって考えてみると、ちょっと柔軟に想像できるではありませんか?
「演奏聞きにきてください」なんて、思い切ってご招待するとか。
(ただし女性の一人暮らしは、男性を気楽にお招きしないように・・・下心があれば別だけど。いや、あのその)
とにかく、自分が疲れない方法を探しましょう。でも、毎日8時間練習が筒抜けだったら、苦情がきても仕方ないかもしれません・・・アパート選びは慎重に。日本人経営の不動屋も増え、音楽家用のアパートの紹介をしているところもありますので、日本語無料新聞やネットで捜されるとよいでしょう。