声について:声と国?

 

 

フランスの声楽の本は全部読んでいないけれど、それでも幸い2冊はなんとか、大まかに読むことが出来た。ほかにも古いコピーを見直していたら、発声について書かれているはずだったのに、肝心の、その箇所だけコピーしていなかった。なんと馬鹿なことを。(高い本だもん)

そして数年前に出された?現役の先生の、比較的新しいらしい本を読んでいる。うなずけることは多いのだけど、気になることも少なからずあって、とまどう。これは、ご無沙汰しているけれど、声楽講師を指導する先生の先生に会って、議論したい気持ちだ。

 

「フランス人は、フランス語のせいで、声がひらぺったくなるので、丸くするように。」というので、早速引っかかってしまったのだ。数年ロシアに住み、ロシア語で過ごしたフランス人は問題なかった、とか、北欧の人は問題がない、とおっしゃるのだ。逆に、外人にフランス語はむつかしく、鼻母音を話せるようよく練習させたら、声楽の声まで出が悪くなってしまった。予定外だった。と、おっしゃるのだ。

(えらく素直な所がいいけど)

 

う〜ん、私もそういうことをくぐり抜けてきたんだろうが、もう忘れている。

しかし、私はフランス人の声をひらぺったいなどと夢にも思ったことがないので、最初の文にはやはり疑問、かな。

そしたら、もっとひらぺったい日本語を話す私たち、救いがありませんがな。

 

それで思い出した、日本人の顔と西洋人の顔の比較・・・で、日本人は不利、という定説(?)。鼻が低いので、鼻に響く場所が少ない、というもの。私は賛成しない。パリには中国移民の子供たちもいて、声だけ聞いていたら、完全にパリジャン。(いや、国籍もフランス人だけど。)顔がひらぺったくても、声は白人同様に響いていることになる。しかも、中国人の中には、日本人よりはるかに鼻と目の間が平たい人も多いのだよ。もちろんプロの歌手だって、いる。

 

逆に、フランスで生まれ、フランスで暮らしていても、アジア系両親の故郷のナマリのある人もいる。何となく、ベトナムの人たちは、すらすら仏語を話しているのに、ナマリがある。歴史に無知なのでよくわからないけれど、ヴェトナムがフランスに支配されていた頃、フランス語を話していたそうなので、その人たちなのかもしれない。でも、その人たちの子供に当たる世代(現在すっかり大人)でも、なまってるフランス語はなまっていて、それこそ“平べったく”聞こえるのだ。話しているとフランス語になっていても、歌ったとたんに、一定の母音・子音がなまってしまう、というケースもあった。

 

なお、断っておくが、白人フランス人の中にも、フランス語の発音が出来ない人もいる。

 

国籍フランス人の人々といっても、実際にいろんな肌のカラーあり。つまり、声に関しては「なかなか一概には言えませんなあ」ということにななる。黒人系には、話し声の響きもいいし、広い音域の人が多いかもしれない、という気はするけれど、結論を出せるほどの人数に出会っていないので、なんともいえない。それに、必ずしもでかい声の出ない黒人もいる。黒人、とまとめて書いてしまうけれど、アフリカは広いし、アフリカ以外のところにもたくさん“黒人”はいるので、おそらく文化や慣習が全然違うのだろう。5メートル離れて平気で会話している人々もいれば(かなりうるさい)、おっとりした人々もいる。植民地化によって移植されたフランス語は、結局その国のなまりをしっかりと受け継いでおり、なんとも不可思議な発音のフランス語もある。

 

人種とか、なんとか人、なんて気軽に言ってしまうけれど、本当は、あまり意味がないだろう。人間で一番違うのは、男と女であり、それは万国共通。生まれたところ、育った所、環境、とはいえ、もって生まれたものも違うし、それは一概にナントカ系、と、本当は言ってはいけないのではないか。だって、今は「ある国」でも、昔は、違う国だったところもあるんだし、アフリカでは、仏語圏のところは、昔は違う言語で話していたんだし、今フランス人だと思いこんでいる、あなたの隣にいる人は、実は、よその国からフランス国籍を取得した人かもしれないし、その人だって、祖先にはフランス人がいたかもしれない。

 

なんか、ヨーロッパというところは、というか、パリというところは、というべきなのかわからないが、人間いろんなバリエーションがあり(“種”ではなく)その混ぜ合わせがあり、文化のバリエーションがあり、言葉があり、年とともに常にそれらの変化があり・・・人が流れ動いている、というのを私は身近に感じる。

 

 

とか言いながら、アジア人だと、やっぱりその音色はおしょうゆに聞こえてしまう場合もあるのはおもしろい。(子どもはそうでもなかったりするが)東洋系の声は、自分の録音を含めて、なんだか、「色」が違うなあ、と思う。黒人の声も、ア、黒人だ、とわかる。白人もわかる。声帯の仕組みが違うわけないから、肌の色が違うように、声も違うものなのかしら・・・ほらね、言ってることが矛盾している。アラブ人やインド人のオペラ歌手がいたら、どんな声かしら、と思ったりする。

 

こういうことを研究している人がきっとどこかにいるのだろうな。いて欲しいな。

声というものは、おもしろくて仕方ない。私がロシアやドイツに住んでいたら、一体どんなことを考えているのかなあ

 

2008

 

雑歌屋もくじ

 

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