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ソルフェージュの国・フランス・・・とその実態・・・

 

ソルフェージュというのは、楽譜を読んだり書いたり・・・

ピアノや楽器を弾くには、楽譜を読む力があったほうがいい。

その辺の知識がソルフェージュです

 

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フランスの音楽学校での音楽教育

 

フランスでは、このソルフェージュを、大変重要視しています。どれほどかというと、たとえば、音楽学校の1年目は、この授業しかない、というくらいです。つまり、楽譜の読みができるまで、楽器の練習は、なし。教材の方も、もうゴマンとあるんじゃないかと思うほど、いろんな出版社、レベルごとに出ています。同じ筆者のものでも、初級から、8段階くらいシリーズになって、でています。初歩から始めて、10年くらいは勉強しないと、ディプロムはもらえませんよ、ということです。

たとえばallermというシリーズは、「譜よみ・リズム」編と、初見を含めた「歌」シリーズのふたつがあります。さらに、生徒用と先生用が別に出版され、それが、各レベルごとにある・・・という具合。

これらを毎年一冊ずつきちんと終わればよいはずなのですが、何せ週に1度、1時間〜1時間半のクラスでの授業。また、日本の年間44回ほどレッスンとは違い、こちらはバカンスのためしょっちゅう中断し、年33回前後です。そして楽器の実践は、一年目は「なし」ですから、身につきそうなものも、ちょっと苦しいものがあります。家で練習すればよい、といいたいところですが、親に音楽の経験がなかったら、その親は「楽譜が読めない」のです。助けようがありません。

なお、この“一年目”は、7歳から。1年生で読み書きを学ぶので、それが終わったら、ということです。

 

 

日本とフランスの普通学校の授業

 

日本では、“ソルフェージュ”の名前をださずとも、音楽の授業で、楽譜の読み書きを学びます。ピアノ教室へいく子供たちは、さらに、リズムや音階、うた、といったこと=ソルフェージュを習いながら、ピアノも学びます。ですから、「ソルフェージュだけのクラス」というのは、受験準備の音高、音大受験生には縁があるでしょうが、普通に音楽教室へ通う分には、あまり聞きません。大手楽器会社のシステムには、きちんと取り込まれ、グレードテストでは、当たり前に必須となっています。

 

学校では、音楽の授業は、特にないフランス。あったところで、シャンソンを歌ったり、中1ではじめてリコーダーにさわったり、というのが今まで聞いた平均像で、まったくおどろきました。ですから、普通の学校で楽譜を教えている先生は、貴重です。幸い、そういう先生にも出会いました。一番感心したのは、ある私立学校で、生徒ふたりにつき1台鍵盤楽器があったり、楽譜の読みも習ったり、バロック音楽から、現代のポップ・ラップまで網羅した、先生の手作り教科書もある、という素晴らしいケースです。もちろん嬉しい驚きです。

 

フランスでのソルフェージュ教材は“ダンノーゼルのソルフェージュ”を始め、日本語に訳されて出版されているものも少なくないはずです。前書きでは、フランスのシステムに、驚嘆された日本の音楽家の声が載せられていましたし、私も内容、展開の仕方、という点では同感しています。

 

それにしても、問題は「実践」。楽器を弾かないのにソルフェージュをまなぶ。楽譜の読めない子供に楽器と楽譜を与えても、仕方がない。あいうえおの読み方を知らない子に、本をいきなり与えるようなものだからです。長い目で見れば時間を上手に稼いでいるとも言えるはずなのですが、1年間、完全に楽器をさわらないでソルフェージュだけ・・・という授業は「つまらない」可能性があります。しかも、もし、わからなくなったら、学校の授業と同じで、適当においてきぼりをくらいます。

 

日本の子供たちは、恵まれていると思います。別に音楽教室へ行かなくとも、学校でカスタネットをたたいてリズムの勉強をしたり、小3ともなれば、リコーダーを吹きます。(今もかわっていないと嬉しいのですが?)私の経験では、小学校高学年から、音楽専門の先生がいらっしゃいました。学校に、鼓笛隊もありました。つまり、いろんな楽器が、学校にあります。オルガンも、人数分ありました。合唱部だってあります。高校のときには、あらためてリコーダーを買わされましたし、クラスの人数分ギターがありました。教えた学校でも、お古のコンサート用ピアノあり、骨董品に近いエレクトーンあり、ギターも数本・・・生徒は全員、ソプラノ・アルトリコーダーをもっていますから、アンサンブルも一応可能でした。(一応というのは、いろんなメーカーのリコーダーなので、音質がそろわないのです)

これらの音楽の授業がないというフランス・・・がっかりしました。

 

コンセルヴァトワールは「一部の子供が行く所」らしい。しかも、公立の場合、下手だったら試験で落とされて、レッスンを続けられなくなります。もちろん、入る時点でも同じ。受け入れる生徒数が制限されているからです。科にもよりますが、ピアノなど人気のあるクラスは、

子供であろうと、競争率が厳しいようです。

 

私は、フランス人を前にして、声を大にして言っています。

「ニホンの普通の学校の音楽教育を受けられてラッキーだった」と。何度でも言います。

もちろんピアノに通ったり、本と同じくらい楽譜を読むのが好きだったので、得意だった科目なのですが、普通の学校での「実践」によりそれがほとんど「日常茶飯事」であったことは、大きいと思うのです。

 

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大人になってからのソルフェージュは難しいか?

 

これが、私の今の課題です。楽譜を読むのを大人になって始める生徒がとても多いから。また、ドレミは読めるというケースでも、特殊なこともあります。音程は慣れれば「読める」けれど、問題は・・・音程を「歌わない」のです、この国のソルフェージュのクラスでは!!!!

ドレドド・・・と、「言う」だけ。Why not・・・でも、個人的にはあまり好きではありません。

 

歌のクラスにはじめてやってくる生徒の中には「ソルフェージュなんか、やりたくない」「ソルフェージュはやっているが、音は歌えない」

「あれ何の役に立つの?」(!(-_-;))という人がけっこういます。もちろん、絶対音感をもて!というわけではないので、なんのヒントもなく「歌えない」のは、当然でしょう。しかし、私が言いたいのは、「ド」の音を与えたら、「レ」「ソ」の音が歌える、といったようなことです。訓練すれば可能です。なのに、やる前から「ソルフェージュは絶対いや!」というくらいの反応さえある。

 

・・・いったい、この国での「ソルフェージュ」は、化学記号と同じくらい複雑なイメージを持っているんだろうか!?

あんたら子供か?

 

ってな気持ちにさせられます。

 

でもって、しつこく、5分だけだから、と、オトナ相手に私もくいさがります。私の教室は、カラオケ教室ではない、と。私は、生徒さんに楽譜を少しでも読んでもらいます。リズムだって、タンタンタン、ウン、とやりたいところですが、その言い方はないので、こちら式に従って、しつこくくりかえします。こういうことは、子供の頃、一定のリズムで手をたたく習慣をつけていれば、あまり難しくないのではないかと思うのですが、それすらたいへんな人ももちろんいます。まあ、日本でも、お酒の席で、手をずれてたたいてる方、いらっしゃるかな。

 

「私は音痴で・・・」と自首される方は、たいてい、音程は大丈夫なんです。実は「リズム音痴」ということが多く、伴奏とずれるから、カラオケで困るのです。それをなおせば、声も素直に出ているし、なんとか格好がつくのに、なぜか一定のリズムがなかなか身につかない、歌いながら、手をたたけない・・・というケースがあるのです。(大人だけでなく、子供もいますが・・・)

 

日本人の生徒さんで「私はあまり学校で音楽を習う年代ではなかったから、楽譜が読めなくて・・・」といらっしゃる方もありますが、実は、とってもよく読めてらっしゃいます。数箇所を訂正すれば、すんなり進みます。日本の方は、謙虚なのです。

 

大人相手に、子供相手に、歌うソルフェージュを流行らせたい。しかし相手はフランス人・・・

まだまだ課題は山ずみです。

 

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